テニ衛門歌舞伎テニス【カブテニ】

コラム 2026-10-02

ダブルスは稼げないって本当?賞金は2人で山分け

同じコートで、同じように勝ち上がっても、ダブルスの賞金はシングルスとは比べものにならないほど少なくなります。ダブルスは本当に稼げないのか。男子の大会の数字で確かめてみます。

賞金は、ペアで1つ

まず知っておきたいのは、ダブルスの賞金はペアに対して支払われるということです。選手1人ずつに出るのではなく、ペアで1つの賞金を受け取り、それを2人で分けます。

たとえば2026年のウィンブルドンで、ダブルスに優勝したペアが受け取る賞金は約1.5億円です。大きな額に見えますが、2人で分ければ1人あたり約7,600万円になります。

出られるかは「2人の合計」で決まる

ダブルスもシングルスと同じように、ランキングによって出られる舞台が変わります。違うのは、出場できるかどうかが2人のランキングの合計で決まることです。合計には、それぞれの選手のシングルスとダブルスのランキングのうち、良いほうが使われます。

男子の目安は、グランドスラムがペア合計で約150位まで、ATP500・250は約65〜165位まで、チャレンジャー(CH50〜CH175)は約140〜1,200位まで、ITFワールドテニスツアー(M15・M25)は約2,500位までです。この目安は2026年の各大会のエントリーを参考にしたもので、大会や時期によって変わります。

ウィンブルドンの賞金を、1人分で比べると

ペアの賞金を2で割った1人分で、2026年ウィンブルドンのダブルスの賞金を見てみます。1回戦負けで約180万円、ベスト16で約480万円、ベスト8で約950万円。ベスト4で約1,900万円、準優勝で約3,800万円、優勝で約7,600万円です。

シングルスでは1回戦負けでも約1,600万円でした。ダブルスで同じくらいの額を手にするには、ベスト4まで勝ち進む必要があります。

大会の段が下がると、桁が変わる

男子ダブルスの1人分の賞金を、大会ごとに並べます。

グランドスラムの全豪オープン(出場の目安はペア合計160位前後まで)は、優勝で約4,500万円、準優勝で約2,425万円、1回戦負けで約220万円です。ジャパンオープンなどのATP500(ペア合計65〜90位まで)では、優勝が約1,079万円、準優勝が約575万円、1回戦負けが約75万円になります。

チャレンジャーのCH125(ペア合計140〜250位前後)まで下がると、優勝しても約74万円、準優勝で約43万円、1回戦負けは約87,000円です。一番下のプロ大会ITFのM15(ペア合計2,500位前後まで)では、優勝で約69,800円、準優勝で約40,500円、1回戦負けは約8,100円しかありません。

日本一を決める全日本選手権では、優勝で25万円、準優勝で12万5,000円、1回戦負けで2万5,000円です。

同じ「優勝」でも、およそ9.5分の1

ウィンブルドンのシングルス優勝は約7.2億円。ダブルス優勝の1人分は約7,600万円です。同じ大会の、同じ「優勝」なのに、受け取る額はおよそ9.5分の1になります。

ダブルスの優勝も、何試合も勝ち抜いた末に手にするものです。それでもこれだけの差がついている、というのがダブルスの現実です。

日本の大会は、もっと少ない

国内の大会になると、額はさらに小さくなります。全日本選手権は賞金総額2,064万円(男女の合計)で、シングルス優勝が300万円、ダブルス優勝は1人分で25万円です。

地域の選手権である東海中日テニス選手権(賞金総額200万円)では、シングルス優勝が24万円、ダブルス優勝の1人分が2万5,000円。明石オープン(賞金総額50万円)では、シングルス優勝が18万円、ダブルス優勝の1人分は2万円です。

ダブルスは、経験を重ねたベテランの技が光る種目です。それでも日本では、シングルスから退いた選手がダブルス専門で競技を続けていく道は、ないに等しいのが実情です。

トップ100でも、グランドスラムに出られるとは限らない

ダブルスには、賞金の少なさとは別に、出場の仕組みそのものに壁があります。

1つ目は、出られるかどうかが2人の合計で決まることです。グランドスラムの目安はペア合計で約150位まで。自分がダブルスで世界92位なら、相手には60位前後より上が必要になります。

2つ目は、シングルスの選手も入ってくることです。出場にはシングルスとダブルスの高いほうのランキングを使えるため、シングルス50位どうしが組めば合計100位で枠を取れます。ダブルスを専門にする選手は、こうしたペアとも枠を争うことになります。

3つ目は、自分だけでは決められないことです。相方がけがや欠場をすれば、自分も出られません。ペアを組み替えるたびに、出られる大会も変わります。

4つ目は、予選がないことです。チャレンジャーのダブルスには、規則で予選が設けられていません。順位が足りなければ、勝ち上がって本戦に入る道そのものがありません。

世界には、ダブルスで食べていく道がある

ダブルス世界100位以内に入っている男子選手の数を国別に比べると、違いがはっきりします。アメリカは16人。そのうち14人が大学テニスの出身です。アメリカの大学の団体戦では毎回ダブルスがあり、大学で組んだペアのままプロになる選手もいます。

インドは4人です。シングルスでは100位以内が0人なのに、ダブルスには4人いる。国の五輪強化制度や企業の支援が、ダブルスの選手に回っているためです。

日本は1人。2026年10月5日付のランキングで92位の上杉海斗だけです。国内大会のダブルス賞金は、優勝しても1人2万〜25万円。国内だけでダブルスを続けて生活していく道は、いまのところありません。

2028年から、さらに減るかもしれない

ダブルスをめぐる環境は、これからさらに厳しくなる可能性があります。男子ツアー(ATP)の計画案として報じられた内容では、大会の賞金のうちダブルスに充てる割合を20%から10%に下げ、ダブルスの出場ペア数を半分にするとされています。マスターズは16ペア、ATP500・250は8ペアになる案です。

これは選手側の声明で示された案の内容で、決定したものではありません。また、グランドスラムは対象外です。

ダブルスにも、目を向けてほしい

同じコートで戦っても、賞金はシングルスの何分の1。出場の仕組みにも、ダブルスならではの壁があります。それでも、ダブルスで世界と戦っている選手がいます。

知られないままでは、守ることもできません。次に大会の結果を見るときは、シングルスだけでなくダブルスのドローにも目を向けてみてください。

※すべて男子の数字です。ダブルスの1人分の賞金は、ペアの賞金を2で割った額です。

※ウィンブルドンの賞金は2026年ウィンブルドン公式の賞金表。1ポンド200円換算です。

※大会ごとの賞金は全豪2026(ATP公式)、ジャパンオープン2026・チャレンジャー キャンベラ(2026年1月)のドロー表、ITF規程(2026年版)、全日本選手権2026ファクトシートによります。1ドル150円、1豪ドル100円換算です。

※出場の目安は2人のランキング(シングルスとダブルスの良いほう)の合計で、2026年の各大会のエントリーを参考にしたものです。大会や時期で変わります。

※国内大会の賞金は2026年の各大会要項(源泉税込)によります。

※2028年からの変更は、AP通信(2026年7月3日)が報じた選手側の声明による案の内容で、決定ではありません。グランドスラムは対象外です。

出典・参考

  • ウィンブルドン 2026年 公式賞金表
  • 全豪オープン2026(ATP公式)
  • ジャパンオープン2026・チャレンジャー キャンベラ(2026年1月)のドロー表
  • ITF規程(2026年版)
  • 全日本選手権2026ファクトシート、2026年の各大会要項
  • グランドスラム・ATPの規則集(2026年版)
  • ATP公式ランキング(2026年10月5日付)
  • 大学テニス協会(ITA)の記事・各大学の選手紹介
  • インド・スポーツ庁の発表、Indian Tennis Daily(2026年7月)
  • AP通信(2026年7月3日)