コラム 2026-10-09
テニスの国スポとは?ルール・出場枠・歴代優勝県

テニスにも、47都道府県が県の名前を背負って戦う大会があります。国民スポーツ大会(国スポ)のテニス競技です。2026年は青森県で10月11日から14日まで行われました。ここでは、大会の実施要項や日本テニス協会の記録をもとに、国スポのテニスがどんな仕組みで、どんな歴史をたどってきたのかを整理します。
国体から国スポへ
国スポのもとになった国民体育大会(国体)は、1946年に始まった都道府県対抗のスポーツ大会です。開催地は毎年持ち回りで、全競技の合計点によって都道府県の順位が決まります。男女総合の1位には天皇杯、女子総合の1位には皇后杯が贈られます。
2024年からは「国民体育大会」が「国民スポーツ大会」に名前を改めました。きっかけは2018年のスポーツ基本法改正です。2026年の青森大会は第80回にあたり、37競技が行われました。テニスはその中のひとつで、ここで取った点も県の総合成績に加わります。
青森に行けるのは予選を勝ち抜いた県だけ
本大会には、すべての県がそのまま出られるわけではありません。まず各都道府県の予選で代表を決め、次に地域ごとのブロック大会を戦い、そこで枠をつかんだ県だけが本大会に進みます。
成年男子の場合、ブロックごとの出場枠は関東と九州が6、近畿と中国が4、東北と四国が3、北信越と東海が2、北海道が1で、これに開催県の1枠が加わります。たとえば関東ブロックは8都県で6つの枠を争う計算です。地域によって枠の数がかなり違うことがわかります。
4つの部門と出場チーム数
テニス競技は成年男子、成年女子、少年男子、少年女子の4部門に分かれています。本大会の出場数は成年男女がそれぞれ32、少年男女がそれぞれ47です。成年は47都道府県のうち15が本大会に届かないことになります。
成年の対象は2008年4月1日以前に生まれた人です。少年は高校生の年代が中心で、中学3年生も出場できます。青森大会の会場は新青森県総合運動公園テニスコートで、砂入り人工芝のコート24面を使い、4日間のトーナメントで争われました。
選手は2人、3本勝負の団体戦
国スポのテニスは都道府県どうしの団体戦ですが、1チームの選手はたった2人です。1試合はシングルス1番手(S1)、シングルス2番手(S2)、ダブルス(D)の3本で構成され、ダブルスはその2人がペアを組みます。
3本のうち先に2本を取った県が勝ちです。シングルスで2勝すれば、その時点で勝負が決まるため、ダブルスは行いません。逆にシングルスが1勝1敗なら、同じ2人がそのままダブルスに出て決着をつけます。2人とも単複の両方を戦える力が求められる形式です。
8ゲーム先取の1セットとノーアド
試合はすべて8ゲームズプロセットで行われます。8ゲームを先に取った方が勝つ1セットだけの勝負で、8-8になるとタイブレークに入ります。さらにノーアドバンテージ方式のため、デュースになったら次の1ポイントでそのゲームが決まります。1ポイントの重みが大きく、短い時間で流れが変わりやすいルールです。
コートは砂入り人工芝、いわゆる「オムニ」です。ATPやWTAのプロツアーでは公式サーフェスとして使われておらず、日本で広く普及している独特のコートです。プロが普段プレーしない環境なので、アマチュアの選手がプロに勝つこともあります。なお、少年の部はノーレットで行われ、サーブがネットに触れてもそのままプレーが続きます。
今はプロも県の代表になれる
かつての国体はアマチュアのための大会でした。日本スポーツ協会のスポーツ憲章が1986年に施行され、旧来のアマチュア規程は廃止されています。現在のテニス競技では、日本テニス協会に登録したジュニア、一般、プロの選手が出場できます。学生も社会人もプロも、同じ県の代表として同じ舞台に立つのが今の国スポです。
成年には「ふるさと選手制度」もあります。住んでいる県や働いている県に加えて、卒業した小学校・中学校・高校がある県からも出場できる仕組みです。原則として2年以上続けて使うこととされ、使えるのは2回までです。
成年男女の歴代優勝
成年男子の近年の優勝県は次のとおりです。2015年和歌山大会と2016年岩手大会は和歌山(奥大賢・長尾克己)が連覇しました。2017年愛媛大会と2018年福井大会は愛媛(片山翔・佐野紘一)、2019年茨城大会は三重(関口周一・島袋将)です。2022年栃木大会は鹿児島(齋藤惠佑・山﨑純平)、2023年鹿児島大会は愛媛(片山翔・中川舜祐)、2024年佐賀大会は滋賀(中川舜祐・柴野晃輔)、2025年滋賀大会は愛媛(楠原悠介・片山翔)が勝ちました。片山翔の名前が何度も出てくるのが目を引きます。
成年女子は、2015年和歌山大会が埼玉(岡田上千晶・金井綾香)、2016年岩手大会が愛媛(波形純理・長谷川茉美)、2017年愛媛大会が愛媛(華谷和生・波形純理)、2018年福井大会が埼玉(清水映里・山口芽生)、2019年茨城大会が埼玉(輿石亜佑美・清水映里)でした。2022年栃木大会は愛知(阿部宏美・永田杏里)、2023年鹿児島大会は鹿児島(松田美咲・清水映里)、2024年佐賀大会は栃木(森崎可南子・今西美晴)、2025年滋賀大会は滋賀(阿部宏美・山﨑郁美)です。清水映里は埼玉で2度、鹿児島で1度、計3度の優勝を経験しています。
2020年は大会が延期され、2021年は中止でした。2015年から2019年の選手名は、名簿に登録された2人を記しています。
部門ごとの最多優勝県
1975年から2025年までの優勝回数を部門ごとに数えると、成年男子は東京の7回が最多で、福岡が5回、兵庫・三重・愛媛が4回で続きます。成年女子は兵庫が13回で、京都6回、愛知と東京が5回です。
少年男子は福岡が14回でトップに立ち、東京8回、神奈川6回が続きます。少年女子は兵庫13回、東京12回、大阪7回です。最近の少年の部では、男子は大分と京都が優勝し、女子は大阪が2024年と2025年に連覇しています。
2026年の愛媛はアジア大会の金メダルペア
2026年の愛媛代表は楠原悠介と中川舜祐でした。2人は同じ年のアジア大会男子ダブルスで、日本人ペアとして52年ぶりの金メダルを獲得しています。2人とも伊予銀行の行員で、アマチュアの選手です。
中川は前年の2025年、ふるさと選手制度を使って滋賀代表として出場し、決勝で愛媛の片山翔に7-9で敗れました。その決勝は愛媛が2-0で滋賀を下し、楠原は清水悠太に9-8で勝っています。前年は敵同士だった2人が、2026年は愛媛のチームメイトとして戦いました。青森大会の1回戦は、10月11日の午前9時から秋田との対戦でした。
「地元の選手ではない」という指摘
国スポには批判もあります。県や地元企業が、その土地で育ったわけではないプロや実業団の選手を雇い、チームを強化するやり方です。これはテニスに限らず国スポ全体の課題として語られてきました。
日本スポーツ協会の有識者会議が2025年にまとめた提言は、「県外選手を総合成績のためだけに短期間所属させる状況も見受けられる」と指摘しています。開催県が天皇杯を取るために選手を集めることへの批判も、東京新聞(2023年1月3日)などで報じられてきました。
地方の企業が選手と県を支える形
一方で、別の見方もできます。伊予銀行は選手を雇って競技活動を支えながら、愛媛の代表として送り出しています。選手は競技を続けられ、県は代表の活躍で盛り上がります。
野球やサッカー、バスケットボールには「地元のチームを応援する」文化が根づいています。テニスは個人競技の色が強く、その地域の壁をなかなか越えられません。国スポは年に1大会だけとはいえ、地元の代表を応援する形を実際につくっています。こうした形が、テニスにもっとあってもいいのかもしれません。
国スポは町も動かす
国スポは開催地の経済にも影響します。2025年の滋賀大会の経済効果は、県の試算で約1,326億円とされました。そのうち7割以上は施設の整備によるものです。
学生も社会人もプロも、県の代表として4日間を戦うのが国スポのテニスです。自分の県から誰が出ているのかを調べてみると、いつものツアー観戦とは違う楽しみ方が見つかるはずです。
※国体から国スポへの名称変更は、2018年のスポーツ基本法改正による。
※ふるさと選手制度は原則2年以上続けて使う。使えるのは2回まで。
※少年の部はノーレット(サーブがネットに触れても続行)。
※2020年は延期、2021年は中止。2015〜2019年の選手名は名簿に登録された2人。
※最多優勝回数は日本テニス協会「過去の種別成績一覧」(1975〜2025年)から集計。
※テニスでプロの参加が認められた年は、確かな出典が確認できないため記載していない。
※国スポの成績がJTAランキングに反映されるかは、現行規程で確認できなかったため記載していない。
出典・参考
