コラム 2026-10-02
プロテニス選手って、どうやってなるの?試験はある?

プロテニス選手になるには、難しい試験に合格しなければならない。そう思っている人は多いかもしれません。実際の仕組みは、かなり違います。
実は、誰でもプロになれる
日本テニス協会(JTA)のプロ登録には、成績の条件がありません。大会で何位以上、ランキングで何位以内といった基準はなく、手続きを踏めばプロになれます。
流れは4段階です。まずJTAに一般(またはベテラン)の選手として登録します。次にオンライン講習を受けてミニテストに答えます。このテストは合格するまで何度でも受け直せます。そのあと申請書を出し、JTAが承認すればプロです。
登録は毎年3月末に更新で、更新の際には研修動画の視聴があります。プロであり続けるために求められるのは、成績ではなく手続きと研修だということがわかります。
- JTAの選手登録をする(一般またはベテラン)
- オンライン講習とミニテスト(合格するまで受け直し可)
- 申請書を出す
- JTAが承認して、プロに(毎年3月末に更新)
プロになると、何が変わるのか
プロになっていちばん大きく変わるのは、お金の受け取り方です。全日本選手権など、JTAの賞金大会で賞金を受け取れるようになります。
アマチュアのままでも賞金大会には出られますが、勝っても受け取れるのは「経費」だけです。その額は1日2万円以内で、さらにその回戦の賞金額が上限になります。
一方で、できなくなることもあります。学生の大会には出られなくなり、賞金のないJTAの大会にも原則として出られません(一部例外があります)。学生のうちにプロ登録するかどうかは、この線引きを踏まえて考えることになります。
「プロ」は413人、世界で戦うのは163人
JTAにプロ登録している選手は413人います。男子245人、女子168人です。
これとは別に、シングルスの世界ランキングを持つ日本人は163人います。2つの数字は別々に数えたものなので、そのまま引き算はできません。それでも、「プロ」という肩書きと、世界の舞台でランキングを持っていることが同じではない、という感覚はつかめるはずです。
世界ランキングへの入口
世界を目指す場合の入口は、国際テニス連盟(ITF)の選手番号、IPINを取ることです。年会費は90ドル、およそ13,500円です。
IPINがあれば、一番下のプロ大会であるM15(女子はW15)にエントリーできます。エントリー料は最大40ドル、約6,000円です。
ここで本戦に入って1勝すると、ポイントが1つもらえます。男子はそれだけで世界ランキングに名前が載ります。女子は少し条件が厳しく、3つの大会でポイントを取るか、合計10ポイント以上が必要です。
何位から「食べていける」のか
ランキングに載ることと、テニスで生活できることは別の話です。ITFの調査では、賞金だけで経費をまかなえるのは男子で336位まで、女子で253位まででした。
プロの大会に出ている選手はおよそ14,000人。そのうち黒字なのは約600人だけです。しかもこの計算にはコーチ代などが含まれていないので、実際はさらに厳しいと考えたほうがいいでしょう。
なお、ATPは2024年から試験的に、男子の世界250位以内の選手に最低収入を保証する仕組みを始めています。
世界にも「プロ試験」はない
日本に限らず、世界のテニスにもプロ試験はありません。ITFの大会には、IPINの登録料を払えばエントリーできます。
アマチュアも同じ大会に出られます。ただし受け取れるのは実際にかかった経費だけです。テニスでプロとアマチュアを分けているのは、実力の線引きではなく、大会の賞金を受け取れるかどうかという一点です。
ゴルフは、プロになるのが難しい
比べてみると違いがはっきりするのがゴルフです。2023年の女子のプロテストでは、受験した698人のうち合格は21人。最終テストまで進んだ101人の中から21人が選ばれ、合格率は約3%でした。
男子も2025年のプロテストは4段階あり、それを勝ち抜いて合格したのは58人です。ゴルフでは、プロになること自体がひとつの大きな関門になっています。
アマチュアが、アジアの頂点に
テニスの仕組みを象徴する出来事が、2026年のアジア大会でありました。男子ダブルスで金メダルを獲った楠原悠介・中川舜祐のペアは、2人とも伊予銀行の行員です。
日本人ペアとしては52年ぶりの金メダルでした。準々決勝では、自己最高で世界45位までいったシェフチェンコのいるペアも破っています。プロかアマチュアかという肩書きと、コートの上での強さは必ずしも一致しないことを示す結果です。
プロって、何だろう
ゴルフでは「プロ」と聞くだけで、本当にすごい人だと受け止められます。テニスのプロは、登録の手続きをすれば誰でもなれる。その違いが、肩書きの重みの違いにつながっているように見えます。
テニスにも、プロになること自体が難しい仕組みがあって、それが広く知られれば、プロという言葉の価値はもっと上がるはずです。カブテニはそう考えています。
※JTAのプロ登録の流れはJTAのプロフェッショナル登録の案内、プロになると変わることはJTAのプロ登録講習テキストによります。
※プロ登録の人数はJTA事業報告書(2025年度)、世界ランキングを持つ日本人の人数はATP・WTA(2026年9月28日付)。両者は別々に数えた人数です。
※IPIN・エントリー料・ランキング掲載の条件はITF・ATP・WTAの2026年の規程。1ドル150円換算です。
※賞金で経費をまかなえる順位はITFの調査(2013年のデータ。コーチ代などは含まない)、黒字の人数はITF資料(2018年)によります。
出典・参考
- 日本テニス協会(JTA) プロフェッショナル登録の案内・プロ登録講習テキスト
- JTA 事業報告書(2025年度)
- ATP・WTA 世界ランキング(2026年9月28日付)
- ITF・ATP・WTA 2026年の規程
- ITF IPINガイド(2026年6月)、ITFワールドテニスツアー規程(2026年)
- ITFの調査(2013年のデータ)、ITF資料(2018年)、ATP公式
- 日本女子プロゴルフ協会・現代ビジネス(2023年)、日本プロゴルフ協会 事業報告(2025年)
- 共同通信・tennis365(2026年10月)
